「血糖値スパイク」について

先日NHKスペシャルとして「”血糖値スパイク”が危ない!」という番組が放送されました。

私がまさにこの「血糖値スパイク」の該当患者にあたります。

NHKスペシャル特設サイトより
NHKスペシャル特設サイトより

NHKスペシャル「”血糖値スパイク”が危ない」特設サイト

放送前にまとめられたヤフーのサイト

空腹時の血糖値には異常がないのに、食後の短時間だけ血糖値が急上昇してそしてやがて元に戻る。

急激に上昇して、急激に下降する

私の場合、食後に起きていた高血糖には全く気が付きませんでした。ただ、その後遅れて分泌されたとみられるインシュリンの影響で、血糖値は一時的に理想的な数字を通り越して下がり過ぎ、短時間の間だけ低血糖に陥ります。その「短時間だけ低血糖」になっている状態には、自覚症状がありました。

手と唇の震え、悪寒、立っていられないほどのだるさ、動悸、冷や汗、締め付けられるような頭痛、異常な飢餓感。

自己血糖測定をはじめて、その自覚症状があらわれている時に血糖値を測ったことがあります。血糖値47mg/dl。意識を失って、救急車で運ばれてもおかしくないとされる数字です。でもこの症状、私は記憶にある限り小学生の頃には起こしていたんです。たぶん最低でも、月に数回程度には。

だって、あまりにも日常的にこの状態になっていたから、自分以外の人もお腹が空いたら皆こうなるんだと最近まで信じていたくらいですから。

NHKの番組では、血糖値が上がるときに生じる健康被害ばかりが取り上げられていたのですが、この低血糖の症状でもまた別の問題は起こっていたはずなんです。それが、おそらく30年近く知らないまま続いていた・・・私の身体、もうボロボロやん(笑)

「血糖値スパイク」

2016年1月に受けた糖負荷検査
2016年1月に受けた糖負荷検査

その高血糖とそれに続く低血糖の状態が「異常」で、とても体に悪い状態だと教えてくれたのは、京都の高尾病院で「糖質制限」を推奨されている江部康二先生の書籍でした。江部先生はその状態を「グルコーススパイク」と言って、血糖値を直接上昇させるのは「糖質=グルコース」だけ、糖質を制限することがスパイクの状態をを予防することができるとおっしゃっていました。

その書籍に倣い、私は自分で血糖値を測ってその理論が私には正しいと判断して、今まで糖質を制限してきました。そこではじめて血糖値の「スパイク」を起こさなくなったんです。従来から言われていたのと変わらない、三食欠かさずに食べる、食べ順に気を付ける、体をちょこちょこ動かす程度のことでは、「血糖値スパイク」を防ぐことができていなかったのに。

NHKの番組内で紹介されていた「血糖値スパイク」を起こしている人のうちの何人が、この「三食欠かさずに食べる、食べ順、体を動かす」ことだけで、血糖コントロールが改善したのでしょうか?(番組内ではわずか2名に持続血糖測定器※日本では未承認を装着させて計測しただけでした)

これでは、従来「様子を見ましょう」と放置していた人たちを脅しているだけで、全くなんにも解決も予防もできていないじゃないですか。ただ新たな患者を掘り起こしたいだけだと深読みされてもしょうがないのではないでしょうか。

血糖値の乱高下を引き起こしているのは糖質だということを、わざと隠して「血糖値スパイク」と新たな名前までつけて、なぜ「今」報道するのかもわかりません。

糖質制限の限界と必要性

私は、すべての人類が「糖質を制限するべき」とは思っていません。というか、食べたいならどうぞ食べてくださいと思っています。我が家は兼業農家で、コメやみかんなども作っているのもありますし、今の人口が「古代人類が従来食べ続けていた食事」では到底支えきれない数に増えているのも事実ですから。

いろんな理由で糖質制限ができない人もたくさんいます。病気によっては制限してはいけない人もいます。スポーツをしている人など、糖質が必要な人もいます。糖質制限ではいろんな不調が改善しないことだってあるでしょう。穀物を含む糖質を、まるで毒物のように嫌う人の意見には私も賛成しかねる部分が正直あります。

でも、肥満をはじめとしてインスリン抵抗性のⅡ型糖尿病を起こしている人と違って、この血糖値スパイクを若年層から起こしているインスリン分泌力が弱いIGT(耐糖能障害)の糖尿病予備軍の人たちには、本当に糖質の取り過ぎが致命傷となるんです。

極端な糖質制限が危険なら、なぜ危険じゃなくなる程度の糖質の減らし方を指導してくれないのですか?

私は、食事の最後に食べる茶碗に半分だけの80gのご飯ですら、血糖値が危険といわれた140mg/dlを大きく超える耐糖能異常ですが、それでも極端な糖質制限だからご飯は食べなさいというのですか?

報道の難しさ

たぶん、糖質を制限したらこの「血糖値スパイク」は起きませんなどと報道すれば、自己流で勝手な食事制限をして、いろいろな健康被害を訴えるような人が出てくるだろうということは想像に難くありません。

そして、この報道でもしかしたら自分も?と気が付いてくれる人が増えてくれるかもしれないし、私のような耐糖能異常の病態を少しでも理解してもらえるきっかけになるだろうとは思います。

それでも、ヤフーでの紹介記事にあったように「おにぎり2個をおにぎり+からあげなどのタンパク質を意識した食事に変えること」すら、番組内で伝えていただけなかったことは、とても残念でなりませんでした。

以上、一視聴者からの勝手な感想でした。

 

 

2件のコメント

  1. こんばんは。
    亀レス、じゃない、亀コメになりますが、ほんと、あのNHKの番組には失望しました。
    グルコーススパイクを抑える最も効果的な方法は糖質摂取を減らすこと(程度の問題はありますが)であるはずなのに、そのキホンのキをすっ飛ばして「食べる順番」とは、お笑いですよね。
    「血糖値の乱高下を引き起こしているのは糖質だということを、わざと隠して「血糖値スパイク」と新たな名前までつけて、なぜ「今」報道するのかもわかりません」・・・管理人さんも本当はわかってらっしゃるんですよね、「血糖値スパイク」という新たな疾患概念を打ち出し、そしてまさに管理人さんご指摘のとおり「新たな患者を掘り起こし」、更にはそれら新たな患者に糖尿病薬の適応拡大を図る、それが、あの番組を仕切っていた河盛医師周辺の狙いなんでしょう。何しろ河盛先生は、製薬会社からの報酬額日本一と報じられた実績のあるお医者様ですから、そのように勘ぐるなと言う方がムリというものです。
    というわけで、このエントリ-、最初から最後まで激しく同意しながら読ませて頂きましたが、そんな中でも、糖質制限できない人、してはいけない人、必要のない人、つまり各人の事情にちゃんと目配りした書き方をしておられることに好感を持ちました。糖質制限実践者の方のブログの中には、糖質制限を絶対視して、糖質制限しない人を見下すような記述が見られることが時折あるので・・・。そうではなく、管理人さんのように、違った立場からの視点も持ち、ちょっと引いた位置からも物事を眺めて捉えた上で書いておられる文章は拝読していて気持ちがいいです。
    これからもよろしくお願いします。

    1. おほめいただいて嬉しいやら照れるやらでございます。
      座っていらした医師が、そのような高名な方とは不勉強ながら存じませんでした。
      糖質制限は万能ではないのでしょうが、このグルコーススパイクについてだけは必須だと思われます。それだけに「新たな飯のネタ」にされて製薬会社の思うままに操られるのは悔しいです。少しでもたくさんの人にこの事実を知ってもらいたいですよね。私のつたない記事から伝えたいことを読み取っていただいて本当にありがたいです
      これからもよろしくお願いします。

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