ケトン体って本当にこわいものなの?

糖質制限に出会う前から、ケトン体という言葉を知っていました。もちろん、悪者として。

もう十数年前、長男がまだオムツを付けていた頃の話です。今ほどノロウィルスとかロタウィルスなどと騒がれる前に、下痢と嘔吐の風邪にかかりました。

ケトン体についての説明

元々食が細かった長男は、熱はあまり高くないものの、相次ぐ嘔吐と止まらない下痢でみるみるグッタリとしていきました。ポカリスエットはおろか白湯ですら一口飲んだだけで倍する量の吐瀉物を出し、最後にはストローカップを差し出しても飲んでくれなくなりました。

唇は渇き、ひび割れたようにシワシワです。

連れて行った小児科では、尿の検査をしてみましょうと言われましたが、まだオムツを付けている長男の採尿ってどうすればいいのか聞きました。すっぽり陰部を覆う小さなビニール製の採尿袋を貼り付けるのだそうです。

「採尿できたら連絡して病院に持って来て」と言われて帰宅したものの、もう吐くものすらない状態ではなかなか出ない。便が混じらないようにと言われていたので、何度もオムツの中を覗き込んで、ずいぶん経ってからごく少量の濃い色の尿をとることが出来ました。何とか診療時間中だったので、再度小児科を訪れると紙スティックを見せられました。

『これは脱水や飢餓状態になった時だけ尿に現れるケトン体の試験紙で、見ての通り強い反応が出ています。ケトン体が出ることで、吐き気が増してしまっている状態です。できればすぐにでも点滴をしたいけれど、こんなに小さい子にこの時間から点滴を打つことができないので、とにかく少量づつ根気よく水分を与えて様子を見てください。明日になっても改善しなかったら朝から点滴をしましょう。』

必死に給水をして、翌日の採尿では少しケトン体の反応が薄くなっていたので、点滴は免れたのですが、私の中ではケトン体=怖いものと位置づけられました。

パラダイムシフト

糖質制限に出会って、食べるもので血糖値をコントロールすることが出来ると知り、その考え方にのめり込むように勉強を続けるうちに、再びケトン体というものにたどり着いたのは、最初に聞いた時から10数年たってからでした。

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ケトン体は「人類にとって必要なエネルギー」と聞いた時には、とても信じられませんでした。あの時長男はあんなに苦しそうだったのに。

でも、確かに考えてみれば、糖質を大量にとることに耐性のない体質の私にとって必要なエネルギーのような気がします。今までとは違う新しい考え方(パラダイムシフト)に出会えたのでしょうか?

最初は、きちんと糖質制限が出来ているか確認する指標として、ケトン体に向き合ってみました。まずは近くの処方薬局に頼んで、尿で検査する試験紙を取り寄せました。試験紙の色は濃い紫の日もあれば、わずかに色が変わる日もあり、一日の中でもその濃さはかなり違うことが多かったです。

病院での測定から簡易測定へ

そこで、始めて病院で血中のケトン体を測定したのが2016年1月。

2016/1/23 インスリン・ケトン体分画検査結果

検査前には特に厳格に糖質を制限したのですが、その甲斐のある結果でした。一緒に検査を受けた人の中でも高めの数字。でも、この結果をみてちゃんと糖質制限できてるよかったねと単純に思えなかったんです。尿ケトンの試験紙で測ると、一日の中でもすごく変動していることが分かったいたし、尿から推定していた数字よりは低かったので。

そこで、とうとう自己血糖測定装置に続いて、血中ケトンの簡易測定装置も購入してしまいました。

※ケトンの測定装置は装置そのものの価格は高くないのですが、測定チップが高価なんですよね。定価で1回(=1枚)550円。イーベイで海外からもう少し安くチップを個人輸入していますが、1回30円ほどで測れる血糖値ほどは気軽に測れません。

で、こちらが記念すべき初ケトン自己測定結果。

ケトン初測定結果

単位が↑の結果と違うので、500μmol/L相当ってことになります。(やっぱり普段は低いじゃん!カ¨━━━━( ゚Д゚; )━━━━ン)

その2日後

たまたま最初の自己測定をした二日後のことでした。いつも通り朝食はとらずに、所用で出かけたあと昼食をとるタイミングが無くて、それでもそんなに空腹を感じなかったので何も口にせず、そのまま事務仕事をしていました。

でも、なんだかだんだん気分が悪くなってきました。動悸というほど激しくもないけれど、やけに鼓動が感じられるような気がして、こめかみの上部あたりを中心とする軽い頭痛と嘔気がありました。うーん、なんだか以前から時々おこる原因不明の体調不良の前兆のような感じ。前回みたいに酷い吐き気が来たらいやだなぁ。

ここでふと、血糖値ってどうなんだろう?前回は高くなってなかったよね、と思って測ると低血糖。それでもいつもの飢餓感は感じられなくて、これってケトン体はどうなってるんだろう?と何気なく測ってみることにしたんです。その計測結果がこれ。

2016-3-7 15:35

ちょっと自分の目を疑ってしまいました。

そうこうしているうちに、吐き気はますます強くなっている気がします。慌てて相談した人の話によると、

「急に上がりすぎると血液が酸性に傾きます。 原因は血中の水分不足。 不調が出るという事は、アシドーシスのような状態になっていると思います。6.2のケトン体はまだ身体に合っていないという事だと思うので、βヒドロキシ酪酸は使い切れないと思います。 酸化してアセト酢酸に変わるので、尿中に排出させてください。 水分摂取を。」

「呼気の変化はありませんか?苦しいわけではなくて、深くなる感じ。」

と聞かれて、確かに深呼吸をするような、ため息をつくようなふーっとする呼吸に変わっていたことに気が付きました。

とりあえず、糖分をとってケトン体を下げるために、手元にあったチョコレートをゆっくり舐めつつ飲めるだけの水を飲むうちに、吐き気は治まり頭痛も動悸も消えていきました。

完全に症状が治まった後の測定。

2016-3-7 20:29 ケトン測定

(。-`ω´-)ンー… やっぱりこの嘔気は急激なケトン体の上昇から来ていると考えてもいいみたいです。もしかしたら、以前からの原因不明の吐き気も?

こどもの「自家中毒」という症状

「ケトン体」「吐き気」「頭痛」というキーワードで検索すると、上がってきたのが、こどもの「自家中毒」という症状。中身を見てみると、健康百科「自家中毒」より

 幼児期から学童期にかけて多い「自家中毒」。吐き気や嘔吐(おうと)が主な症状だが、最近は、片頭痛の一種として注目されている。

自家中毒は、「周期性嘔吐症」「アセトン血性嘔吐症」とも呼ばれる。複数の病名があるのは原因がよく分からないためで、さらに最近では、国際頭痛学会が片頭痛の一種として分類している。

アセトンはケトン体と呼ばれるものの一部です。銀座東京クリニック様のサイトでは、こう説明されています。

肝細胞では、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoAの一部はアセトアセチルCoAになり、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を経てアセト酢酸が生成され、これは脱炭酸によってアセトンへ、還元されてβヒドロキシ酪酸へと変換されます。このアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つをケトン体と言います。

説明は難しいですが、アセトンはケトン体の一部で、リンゴの腐ったような甘酸っぱい匂いのする気体です。

ああ『りんごの腐ったような甘酸っぱい匂い』というキーワードには激しく該当する気がします。毎度吐くときにはその匂いがするので、胃液の匂いだとばかり思ってたー!!

京都の小児科内科循環器科の山内医院様のサイトでのアセトン血性嘔吐症の説明にも年齢以外すべてに該当する気がします。

エネルギーの元として肝臓に蓄えられる糖分の貯蔵量が少ないタイプの子供さんでは、食事を取らなかったり、炭水化物が不足すると、すぐに異常が現れてしまうのだと思います。

(*>д<*)アーン 子どもじゃなくてごめんなさーい!調べれば調べるほど、原因不明の体調不良の原因が、ケトン体にあるような気がします。

ケトン体って悪者なの?

これ以降、ケトンの急上昇するような断糖や絶食が怖くなり、あまり上がり過ぎないように気を付けていました。ケトアシドーシスを恐れる糖尿病医の気持ちもわかるような気がします。(ケトアシドーシスは、このアセトン血性嘔吐症の症状に加えて、命を脅かすほどの高血糖が起こるのですから、その恐ろしさは比べ物にならないほどですけど)

ただ、この一年間に頻回というほどではないですが、ケトン体の自己簡易測定を行ってみて、高ケトン=アセトン血性嘔吐症というわけではないことがわかってきました。

一年間で記録に残っているケトン体測定は68回(!!!)自分で数えてあまりの数に(@ ̄□ ̄@;)!!いくらかかってるんだ―?!

自家中毒もどきの症状を起こした時以外でも、最高5.9まで上がったことがありますが、全く吐き気はありませんでした。むしろ爽快感すらありました。

かと思えば、3.3の時にムカムカしてみたり。

あくまでも、私の場合ではありますが、嘔気が出てしまった場合の対処法もわかってきました。

あわてて糖質とるとケトンはあえなく消えてしまって、次あがってくるのに時間かかってしまうので、まずお白湯を250ml飲みます。大抵は10分ほどで落ち着くのですが、まだ気分悪かったらさらにもう一杯。それでダメなときだけ、ケトン諦めてチョコ一粒。原因不明の嘔気で病院に行ってブドウ糖点滴打たれるよりましだとおもうので。

血糖値にしろ、ケトン体にしろ、体の恒常性を脅かすほどの急激な変化は良くないのだと思います。身体の方も元に戻そうと、余分なケトン体を尿中に排泄するようにしているので、それを手助けするために水分をとるといいのではないでしょうか。

ここまで読んでいただいた方は、やっぱりケトン体は怖いと思われたでしょうか?

でもケトン体が出ていると、認知症やガンやてんかんの患者ではない私でも、本当に身体の動きが軽くなったり、食欲が落ち着いたり、下半身のむくみがへったり、お腹周りの贅肉が減るような気がするし、やっぱり体調が良いことが多いんですよね。

問題は、数値を安定させるのが難しいこと、体質的に自家中毒を起こしやすい人がいること(自家中毒を起こしやすい人ほどケトン体を出しやすいことになりますが)、検査にお金がかかるので確認が難しいこと、でしょうか。

きっと安定的にケトン体で生活することができるようになれば、このような症状が出ることもなくなるのではないでしょうか。(私が完全に糖質を排除していないことも、この症状の一因だとは思いますし)

問題定義というわけではないのですが、ケトン体が実は人類を救うエネルギーだったというパラダイムシフトが起こっている今だからこそ、一部にこういった症状に悩まされている人もいるということを知っていただけたらいいなと思って書きました。

長文にお付き合いいただいて、ありがとうございました。

 

 

3件のコメント

  1. 早速お返事頂き、また私の一部誤解も正して頂きすみません。
    この記事を拝読したことをきっかけに、私もこれからケトン体関係の情報をこれまでより少し注意深く見ていきたいと思います。ありがとうございました。

  2. こんばんは。大変興味深い記事でした。
    管理人さんが経験されたケースを要約すると、
    1.血中ケトンが急上昇した時、アセトン血症嘔吐症と思われる症状が出ることがある。
    2.が、上記自覚症状が現れる血中ケトン値の閾値はまちまち。
    3.また、その時の血糖値もまちまちで低血糖に陥っていない場合もある。
    4.上記自覚症状は適切に対処すると数時間で解消する。
    が、やはり気になりましたのは、頭痛や吐き気といった症状自体は一過性とは言え、それを繰り返すことで脳や代謝に中長期的に悪影響が出てくるというような心配はないのか、ということです。
    管理人さんおっしゃるように、ケトンエネルギー礼賛が時代の最先端みたいな風潮になりつつある(これはちょっと大げさですけど)昨今、それを主張しておられる先生方は、こうした事例を十分把握して「こういうこともありますよ」とオープンにしておられるのでしょうか、また、その上で「でも問題ないんですよ」とおっしゃっているのでしょうか?
    私は宗田先生のご本などは読んでおらず、江部先生のブログを流し読みしている程度なので知らないだけなのかもしれませんが、ちょっと気になりました。
    いずれにせよ、子供の「自家中毒」との対比での説明などとてもわかりやすく、私にとって大変貴重な情報となりました。ありがとうございました。

    1. 素晴らしい要約(人ω・*)ありがとうございます!
      4番の適切な対処をすると~のみ「数十分で解消する(解消しない場合別の原因が考えられるので速やかに病院へ)」としていただくといいと思います。
      (このままコピペして貼りたい!)

      中長期に繰り返す場合の影響について、「自家中毒」の場合も含めて、きちんとしたデータを私は見たことがありません。

      さらに、宗田先生をはじめとしてケトン体推進派の先生方からの警鐘は(私が不勉強だからかもしれませんが)残念ながら見たことがないです。
      一部のサイトや著書によっては「ケトン体礼賛」と言われても否定できないほどの効果ばかりが書かれ、ケトン体は高ければ高いほど良いという書かれ方をしているものもあります。
      だからこそ、拙いながらでも私が発信することで何かの変化が起こるといいなと思って、悩みながら描かせていただいた次第です。

      試行錯誤して書かせていただいた記事を読んでいただいた上、いつも考えさせてもらえるコメントをいただきありがとうございました。

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