耐糖能障害(=IGT)ってなんでしょう?この質問にさっと答えられる人は、糖尿病についてすごく勉強された方だと思います。
耐糖能障害って?
糖尿病というのは、おしっこが甘くなる病気ではなく、太った人がなる病気でもありません・・・というのはもうご存知でしょうか?
ざっくりと説明すれば、細胞のエネルギー材料の一つであるグルコース(糖)を処理する能力が何らかの原因で衰えたり、欠けたりすることで血液中にあふれ出し、いろいろなところで不調をおこす状態を指します。
糖は細胞にとって、手軽にエネルギーに変えられる半面、多すぎれば身体に害を及ぼす劇物でもあるのです。それ故真っ先にエネルギーとして利用したり、細胞に無毒化して備蓄しようとするのです。(備蓄の一つの形がにっくき脂肪っていうのは、こっちに置いておいて)
グルコースを処理する能力が衰える原因の一つが、加齢による代謝の低下であったり、肥満によるインシュリン抵抗性の上昇であったりするわけですね。耐糖能障害というのは、まだ糖尿病と診断されるレベルの血糖値ではないものの、糖の処理能力が健康な人より衰えている状態だと思っていただければいいと思います。
(ここで、糖を上手く処理することができないのなら、糖以外のエネルギーを使えばいいじゃんという考え方が、「糖質制限」です)
私の場合
75gのブドウ糖を経口摂取して、その後の血糖値とインシュリンの値の推移をみる検査で、「健康な人」から程遠い結果になりました。
通常であれば120分後の血糖値は140mg/dl以下、逆に糖尿病の人は200mg/dl以上・・・って、私(120分後212mg/dl)糖尿病やん。
(実際は確定診断のために、もう一回検査を受けることになるらしい。今度200mg/dlを超えたら確実に糖尿病ということになっちゃうので、もう二度と受けません)
で、見てもらいたいのがIRI(インシュリン)の値。血糖値の上昇の割には少な目なんですね。インシュリン分泌能0.33というのはかなり低い。同じ耐糖能障害でも、インシュリンが出ているのに(肥満などの理由で)インシュリンの利きが悪くなって血糖値が下がらない人なら、その利きが悪くなる原因を解消すれば高血糖も解消されるのだけれど、私の場合膵臓の能力自体が微妙らしい。
そしてどうやら膵臓のインシュリン分泌能力が低いのは、親からの遺伝のようです。推測ではありますが、子供のころから夕方に低血糖症状と思われる状態になっていた私は、生まれてこのかた、ずーっと低いままだと思われます。
そして40歳を過ぎた今、年齢とともに低下した代謝の影響で、いよいよ糖尿病を発症しようとしていたわけですね。
糖尿病合併症にならないために
限りなく「糖尿病」である私ですが、でも人工透析や失明や足の切断などをしなくてすむ方法を知っています。インシュリンが少なくて上手く糖を処理できないなら、糖以外のエネルギーを使えばいいのです。糖質を制限して。
従来の糖尿病医療であれば、足りないインシュリンを打てば糖質を制限しなくてもいいとされていましたが、今の私はインシュリンにも害があることを知ってしまいました。
糖尿病に勝ちたければ、インスリンに頼るのをやめなさい [ 新井圭輔 ]
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(新井先生の本では、従来の糖尿病治療とは全く異なる方法が提示されています)
私は糖質を制限することで、耐糖能障害による高血糖を防ぎ、糖尿病合併症にはならない予定ですが、何分にも頼りない私の膵臓と、糖質にあふれた日常生活。糖質の誘惑も多ければ、やむにやまれぬ状況に陥ることも・・・。
実際、高糖質が体質に合わないとわかっていても、やむなく食べて恐ろしい血糖値を見て後悔することもありました。
そこでちょっぴり卑怯な方法ではあるのですが、上の経口ブドウ糖負荷試験の結果を、糖質制限に理解のある内科医のもとに持ち込んで、ある薬を処方してもらいました。
SGLT2阻害薬
それが、SGLT2阻害薬。ここ数年で使われるようになった、糖尿病の新しい薬です。
ヒトは腎臓の糸球体というところで、老廃物をろ過する際ブドウ糖も一緒にいったん原尿として尿細管へ運ばれます。でも本来のブドウ糖は貴重なエネルギーなので、SGLT2が尿細管内で再吸収してリサイクルしています。
しかし糖尿病の人は、ろ過されるブドウ糖の量が多すぎるためSGLT2の量が増え、働きも活発になります。このSGLT2の働きを阻害して、余分な糖を尿糖として排出するのがこのSGLT2阻害薬です。
インシュリンに頼らずに血糖をコントロールすることができる、画期的と言われるお薬です。一日1錠で効果があり、いろんなメーカーから発売されています。尿糖として300kcalを排出するといわれていて、体重減少にも効果があるらしいです。
※副作用もあり、服用には医師の診断処方が必要です。脱水、尿路および性器感染、低血糖の恐れがあります。初期に死亡例もあります。また、新しい薬なので、長期間の服用で未知の副作用が起こる恐れがあることを忘れないでください。
糖質制限を守れそうにない日には、朝こちらを飲用します。(尿糖として排出し始めるまでに2時間ほどのタイムラグがあるそうです)
SGLT2阻害薬を飲んでみて
飲んで血糖値測定実験もしてみました。
カップ焼きそば(糖質78g)を食べても血糖値の最高は165mg/dlで、健康な人と変わらない位の上昇に抑えられました。でも、あんなに食べたいなぁと思っていたカップ焼きそばを、美味しいとは思えなくなっている自分に気が付きました。
そして粗悪な精製糖質を食べると、腸内細菌が一気に乱れることがわかります。一度崩れてしまうと立て直すのに一週間以上かかることも。
最初はこういうお薬に助けてもらうという、逃げ道があるということをいろんな人に知ってもらいたいと思っていました。しかし、やはり基本は糖質の量を制限することが、健康への近道だと実感しました。多くの人にお勧めすることはできませんが、耐糖能障害がある方は特に血糖のコントロールが難しいので、こういう方法もあるってことだけお伝えできればと、思っています。